「肌がむずむずする」「ぴりぴりと痛がゆい」。
症状の出方は人によって様々ですが、場所や時間を問わず急に起こる「肌のかゆみ」に悩まされている人は少なくありません。
ライオンが、20代から40代の女性9,187名を対象に行ったアンケート調査では、約半数にあたる48.8%の人が「過去1年間にかゆみを経験したことがある」と答えました。
さらに、「過去1年間にかゆみを感じた」と答えた150名に対象を絞って「肌がかゆくなる季節」を聞いたところ、以下のような結果が出ています。
<肌がかゆくなる季節>
外気が乾燥する「冬」をあげる人がもっとも多いものの、「季節を問わず1年中かゆみがある」と答えた人も約4割にのぼります。
かゆみのつらさは、単に「肌がかゆい」という事実だけでなくかゆみによって行動が制限されてしまう点にあります。
「かゆみが起こらないように我慢していることや、自由にできないこと」を聞いたところ、第1位は「毛先が肌に触れるとかゆくなるので短く切ったりおろしたままにできない」というものでした。
<かゆみが起こらないように我慢していること・自由にできないこと>
服装や下着も、かゆみが出ない素材やデザインを優先して選んでいる人が多いようです。
ファッションやメイクが限定されるというのは、女性にとってかなりのストレスですよね。
さらに、「かいている姿を人に見られたくない」という心理から、人前での行動に必要以上に気を使っていることも浮き彫りになりました。
同じようにかゆみに悩んでいても、「かゆくなる部位」は年代によって異なるようです。
年代別に「かゆくなる部位」を聞いてみると、40代では1年を通じて「背中・腰」が圧倒的多数を占めました。
20代と30代は、春夏は「頭・目の周り・顔」をあげる人がもっとも多く、秋冬になると20代が「腕」、30代が「背中・腰」となっています。
秋冬にはどの年代も「頭」や「顔」以外の部位が多くなる傾向にあります。
皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層に分かれています。1番外側にある「表皮」は、さらに細かい層に分かれており、「表皮」のもっとも外側の層を「角層(角質層)」といいます。
「角層」は「角質細胞」が何層も積み重なったレンガ状の構造をしています。皮膚がうるおいを保つためには、角質細胞内にあるNMF(天然保湿因子)と角質細胞の間を埋めている細胞間脂質が大きな役割を果たしています。NMFが角質細胞内に水分を抱え込み、細胞間脂質が細胞と細胞の間で水分を挟み込むことで、皮膚の柔軟性を維持したり、皮膚内外の二方向性のバリアとして機能しています。
さらに、皮膚の表面では皮脂と汗が混ざり合って皮脂膜を作り、「天然のクリーム」となって皮膚の乾燥を防いだり、ほこりや細菌などからからだを守っています。
外気の乾燥やストレスによって角層の保湿成分や皮脂が少なくなると、角層の表面がめくれ上がったり、ひび割れたりしてすき間ができ、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
これがかゆみを引き起こします。
バリア機能が低下した皮膚は外部の刺激物質が入り込みやすくなったり、衣服による摩擦などの刺激を受けやすくなって、かゆみが生じたり、赤みや腫れなどの炎症の発生につながるのです。かゆみが生じた部分をかいてしまうことによってさらに角層が荒れ、しつこいかゆみの原因になることもあります。
乾燥や寒冷、紫外線などによるダメージで、角層のバリア機能が低下する場合があります。
タオルやボディブラシで皮膚をこすりすぎると、角層の表面が傷付きます。また、熱いお湯への長時間の入浴も保湿成分を失いやすいので、入浴中の何気ない習慣にも注意が必要です。
ストレスによって免疫力が低下すると、皮膚の代謝サイクル(ターンオーバー)に異常が起き、皮膚の水分保持機能やバリア機能が低下します。
睡眠は、からだの組織を修復する役割を担っています。
ライオンが2006年に実施した「肌と睡眠の研究」では、慢性的に睡眠の質が悪い女性は、質の良い睡眠をとっている女性に比べて、ターンオーバーの周期が変化する傾向にあることが確認されました。
特定の食品だけに偏った食事は、栄養分や皮膚の新陳代謝に必要なエネルギーの不足を招きます。
喫煙は毛細血管を収縮させるため、血液の循環が悪くなり、ターンオーバーにも悪影響を及ぼします。
衣類のデザインや素材によっては、摩擦や締め付け感が刺激になってかゆみが増す場合があります。
角層の機能は加齢により低下します。特に、女性は皮脂腺の働きが20代中盤から衰えてくるため、皮脂不足による乾燥やかゆみがおこりやすくなります。
女性の場合、生理周期に伴うホルモンバランスの変化によって皮膚が過敏になり、かゆみやかぶれを起こしやすくなることがあります。
皮膚のかゆみを予防するために、または、すでに発生している症状を少しでも和らげるために、日常生活の中で簡単に取り組める予防法と対処法をご紹介します。
冬の外出時は手袋やマフラーなどで皮膚の露出を減らし、外気に極力触れないようにします。エアコンは温度設定を適切にし、からだに直接温風が当たらないようにしましょう。
乾燥を感じたら、保湿クリームで保護することも大切です。
紫外線が強い時期、及び時間帯に外出するときは、必ず日焼け止めを塗り、腕や首などを覆う衣服を着たり日傘をさしたりして肌を守りましょう。特に紫外線量の多い4月から9月は要注意です。
もっとも肌に優しいからだの洗い方は、十分に泡立てた石けんやボディソープを手に取り、タオルなどを使わずに洗う方法です。最初から泡で出てくるボディウォッシュを使うと簡単ですね。
お風呂は40℃以下の熱すぎない温度に設定しましょう。低刺激で保湿性の高い入浴剤の使用もおすすめです。
睡眠不足は、それ自体がストレスとなります。質の良い睡眠をとる工夫をしてください。
皮膚の細胞を正常に働かせるたんぱく質、皮膚の調子を整えるビタミン・ミネラル、腸内環境を整える食物繊維などを意識して、バランス良くとります。
血行が良くなると知覚が過敏になりますので、かゆみがあるときは刺激の強い食品やアルコール類は避けた方がいいでしょう。
「締め付け感がある」「縫い目がかたい」「毛羽立ちがある」「ちくちくする」など、皮膚に刺激を与える素材の衣類は避けます。特に、直接皮膚に触れる下着は、刺激の少ない物を選びましょう。
柔軟剤で柔らかく仕上げると、肌への刺激感を抑えることができます。
つらいかゆみを抑えるには、市販の薬を活用するのもひとつの方法です。かゆみを止める成分のほか、皮膚の炎症を抑える成分、荒れた皮膚を修復する成分などが配合された薬を薬局でも購入することができます。薬剤師に相談し、自分の症状に合った薬を購入するようにしましょう。
また、頭皮のかゆみには、かゆみを抑える効果のある薬用シャンプー・薬用コンディショナーを使用するのもおすすめです。
しばらく市販の薬を使用しても症状の改善が見られない場合には、医師など専門家に相談するようにしてください。